塀の中の人へ手紙を書くのが面倒な理由
ネットが普及し、高齢者でもスマホを使いこなす現代でも、留置場・拘置所・刑務所などのいわゆる「塀の中」においては例外で、収監されている人との連絡手段は、面会・手紙・電報・弁護士への伝言くらいしかありません。
塀の中の人間にとって、外部からの手紙というものは楽しみの一つであるどころか、社会復帰に大きく影響します。塀の中に収監されている人の社会復帰を支えるためにも、積極的に手紙のやり取りをしてほしいものです。
とはいえ、社会で仕事をしながら、獄中あてに月1通以上のペースで手紙を送る方はごく少数です。普段から手紙を送る習慣が減ってしまった現代人にとっては、収監されている人あてに、いざ「手紙を送ろう」と思っても、書き方も思い出せず、かなり面倒に感じてしまうものではないでしょうか。
「便箋」「封筒」「切手」などを購入し、ボールペンを取り、手紙の文章を自筆で書くという作業は、スマホやパソコンに慣れ親しんだ現代人にとっては、意外にハードルが高いものです。
ここでは、留置場・拘置所・刑務所など、塀の中に収監されている人宛への「手紙の書き方」や、「ストレスなく書くためのコツ」など解説します。
基本的な書き方
塀の中への手紙といっても、特別なことはなく、通常の手紙と書き方は同じです。
宛名・差出人欄
宛先は、相手が収容されている刑事施設の住所となりますが、「○○拘置所」「○○刑務所」などの記載は、あっても無くてもどちらでも構いません。
例えば、「東京拘置所」へ収容されている「塀野 中太郎」さんへ手紙を送る場合、宛名は以下のようになります。当たり前ですが、差出人の記載がないと届きませんので注意してください。
後述しますが、「封筒+便せん」でも「ハガキ」のほか、「ミニレター」などの方法があります。
手紙にはどんな内容を書けばよいか?
手紙を書き慣れていないから書けないという人は、難しく考えずに以下の構成で書けば良いでしょう。
1.あいさつ
「暑く(寒く)なってきたけど、体調はどう?」
「今、家で夕食を食べ終えてからこの手紙を書いています」
など、書き出しは簡単なものでOKです。
2.自分の近況報告
収監されている人にとって、送り主の近況報告はとても興味を惹く内容です。職場や家庭での出来事、共通の知人との出来事、どこへ遊びに行った、どこどこのお店に行った、など些細な内容で構いません。
また、世間ではどんなことが話題になっているかについても手紙に書くと喜ばれます。
留置場では新聞を読むことができますし、拘置所に収監されているのなら、未決拘禁者の場合、自費で購入することもでき、差し入れされた週刊誌などで世間の情報を知ることはできます。
とはいえ、自分の家族や知人が世間の話題にどう反応しているか、そんな他愛のない内容であるからこそ、塀の中の人にとってはささやかな楽しみだったりします。
3.頼まれたことに関する返事
家族や恋人などの場合、塀の中への手紙の内容のほとんどは、この「頼まれたことに関する返事」がメインとなっているかもしれません。多くの場合、初回の手紙で「差入れしてほしいもの」「知人への伝言依頼」についてのやり取りがあるはずですが、それについての連絡・報告などが内容の大半を占めるといってもよいでしょう。
4.自分の気持ちなど
収監されている人に手紙を出すにあたり、それを機に普段では話さない自分の気持ちについて書くのもよいでしょう。スマホのLINEやメールだと長文になりそうであまり書かないことも、手紙でなら書きやすいという人も多いのではないでしょうか。
送る前にコピーを取っておくと便利
構成をテンプレートとして再利用することで、次回の手紙もスムーズに書くことができます。郵送する前に、書いた内容をコピー、またはスマホで撮影しておくと、後から読み返すことができて便利です。メールやLINEと違って送信履歴やタイムラインがないため、送信履歴代わりにコピーを取っておくことは重要です。
スラスラ書くコツ
はじめのうちは慣れずに苦労するかもしれませんが、1.あいさつ、2.自分の近況報告、3.頼まれたことに関する返事、4.自分の気持ちなど~といった構成さえ覚えておけば、内容に悩むことはないかと思います。
手紙をスラスラ書くコツとしては、あまり考え過ぎないことです。塀の中へ手紙を送る意義は、送ることそのものです。信じられないかもしれませんが、たった1行だけの文章でも、塀の中で生活する人にとってはとても嬉しいものです。
どうしても長文を書かないといけないという思い込みで、書く内容が浮かばずに、結局手紙を送らなくなってしまうのは、非常に残念なことです。
塀の中へ送れる郵便物の種類
留置場・拘置所・刑務所などの施設を問わず塀の中へ手紙を送る際、便箋と封筒での手紙のほか、ハガキや郵便書簡(ミニレター)も使用できます。
特に郵便書簡(ミニレター)は、
- 切手と封筒が不要
- 写真も同封できる
- ハガキと違って届くまで中身を見られることがない
- 料金が63円と安い
という点で、おすすめです。
ハガキの安さと封筒の利便性の両方のメリットがあるため、塀の中から送る際も、塀の外から送る際も多くの人たちから重宝されています。
塀の中へ手紙を送る際の注意事項
手紙の送り方は一般の手紙と同じですが、送り先が刑事施設であることから、いくつかの注意点があります。
検閲がある
当然ながら、収監されている人への手紙の内容は刑務官(留置場であれば警察署の留置係)から検閲されます。必要以上に警戒する必要はありませんが、以下に該当する手紙は検閲に引っ掛かり、本人へ届かない場合があります。
検閲で引っかかる可能性のあるNGな内容
- 犯罪を助長するような内容
- 収容されている人が関わっている事件に関する話題
- 暗号の使用や外国語の使用
実際、私の場合も「自分が起こした事件の報道内容を教えて」と、留置場から知人へ手紙を書き、実際に送ってもらいましたが、私の元へは届きませんでした。私が収監されている警察署の留置係へ、知人が電話で問合わせたところ、「事件に関する内容は入りません」と言わて知りました。
また、検閲にかかる時間として、本人に届くまでにプラス半日(場合によっては1日ほど)かかります。
中から外への手紙は通数制限がある
塀の外にいる人→塀の中の人への手紙は、通数制限がありません。一度に3つの手紙を送ることも可能です。これに対して、塀の中→塀の外の場合、通数の制限があり、留置場にいて被疑者の立場にある人や拘置所にいる未決拘禁者の場合は1日1回までです。
さらに刑務所の場合は、入所したてのころは月に4回までしか出せず、その後、半年無事に
過ごして優遇区分(いわゆる"類"と呼ばれる模範囚ランクのようなもの)が上がると、「月に5通」といった具合に、出せる手紙の数が増えていきます。
まとめ
塀の中に収監されている人々への手紙は、社会復帰を支える重要な手段です。手紙を書く際には以下のポイントを覚えておきましょう。
POINT
・構成に従って書く
・構成をテンプレとして再利用する
・短文でも喜ばれると知っておく
・検閲されても大丈夫な手紙を心がける