はじめに

家族や知人が突然逮捕されてしまうと、何をどうすればよいのか分からず、誰でもパニックになってしまうかと思います。しかし、冷静に対処するためには、逮捕後の流れを理解し、適切な行動をとることが重要です。本記事では、逮捕から拘留、起訴、そして服役に至るまでの一連の流れを詳しく解説し、家族や知人として、あなたが強力なサポーターとなってくれることを願っています。

逮捕・送検

逮捕の流れ

警察が逮捕を行う際には、まず被疑者(容疑者)が犯罪に関与しているという合理的な疑いが必要となります。逮捕された後、被疑者は留置場(警察署内)に勾留されますが、警察は、この逮捕時から48時間以内に被疑者を検察に送致(送検)しなければなりません。この48時間の間に、警察は証拠を収集し、事件の概要を把握します。

家族の対応

逮捕の連絡を受けた家族は、まず信頼できる弁護士に連絡することを強くおすすめします。弁護士は法律の専門家として、被疑者の権利を守り、適切なアドバイスを提供してくれます。また、早期に弁護士と連絡を取ることで、接見禁止措置が取られていない限り、弁護士を通じて被疑者と面会することが可能となります。

以下は、逮捕後の早期対応によく利用される機関の一例です。

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  • 日本弁護士連合会:信頼できる弁護士を探すための公式サイト
  • 犯罪被害者支援センター:被疑者およびその家族の心理的サポートを提供
  • 法テラス:無料または低料金で法律相談ができる公的機関

検察拘留(最大20日間)

勾留の決定

送検後、検察は被疑者を更に勾留するかどうかを決定します。検察による勾留が決定されると、最初の10日間の勾留が始まり、さらに必要に応じて10日間延長され、最大で20日間の勾留が可能です。この間に、警察と検察は共同で取り調べを行い、事件の全貌を解明しようとします。

取り調べの流れ

取り調べは、警察官と検察官によって行われ、証拠の収集や事実確認が進められます。取り調べの期間中、接見禁止の措置が取られていなければ、家族や知人・弁護士との面会が可能です。突然の逮捕で心身ともに疲弊している被疑者にとって、面会は大きな精神的な支えとなります。

また、検察による取り調べは基本的に検察庁で行われるため、被疑者は警察の護送バスに乗って検察庁へ出向いて取り調べを受けます。検察での取り調べがある日は面会が出来ないため、もし面会に行く際は、警察署、または連絡の取れる担当刑事(家族の場合は連絡が取れることが多いです)に確認しましょう。

面会時の注意点

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  • 冷静さを保つ:面会時には冷静に話すことが重要です。感情的になると、逆に被疑者の負担になります。
  • 励ましの言葉:励ましの言葉をかけ、心理的な支えとなることが大切です。
  • 情報の提供:必要な情報を整理して弁護士に伝え、効率的な防御戦略を構築できるようにします。

取り調べの段階でもっとも重要なのは、身に覚えのない自白は絶対にしないことです。裁判で無実を証明しようとしても、日本の刑事裁判では、たとえ取り調べで強要されたものであっても自白は有力な証拠として扱われてしまいます。※過去に起きた数々の冤罪事件では、こうした強要・誘導された自白によって有罪判決が下されています。

起訴または不起訴/処分保留

起訴

取り調べの結果、検察が十分な証拠を揃えたと判断した場合、被疑者は起訴されます。起訴されると、被疑者は被告人となり、裁判にかけられることになります。この段階で、収監場所は留置場から拘置所へと移されます。起訴後、1~2週間以内に公判日程が決まり、弁護士の選任が行われます。資金的に余裕がない場合は、裁判所が国選弁護人を選任します。

また、起訴されると、留置場での生活から拘置所での生活へと環境が変化し、勾留されている被疑者にとってはメンタルを崩しがちな時期でもあります。

不起訴

不起訴となった場合、被疑者は釈放されます。不起訴の理由としては、証拠不十分や犯罪の成立要件を満たさない場合などが考えられます。不起訴処分は、無罪とは異なり、犯罪の疑いが完全に晴れるわけではない点に留意が必要です。

処分保留

処分保留とは、現時点で起訴するかどうかの判断が保留される状態です。処分保留の場合、被疑者は一時的に釈放されることがありますが、後日再逮捕や再調査が行われる可能性もあります。留置場にいる被疑者にとっては、釈放されるため事実上の不起訴というイメージを持つ人も多いようです。実際、不起訴よりもこの処分保留による釈放が圧倒的に多いです。

裁判

裁判の流れ

起訴されると検察によって公判の手続きが進められ、被疑者の立場から被告人となります。日本の刑事裁判は、地方裁判所で行われることが一般的です。裁判では、検察側と弁護側がそれぞれの主張を述べ、証拠を提出し、判決が下されます。
公判準備: 公判が始まる前に、弁護側と検察側が証拠の交換や主張の整理を行います。
初公判: 裁判の初日に、起訴状が読み上げられ、被告人が罪状を認めるか否認するかを述べます。収監されている被告人は、このとき初めて法廷に立つことになります。
証拠調べ: 検察側と弁護側が証拠を提出し、証人を尋問します。
論告・弁論: 検察側が論告を行い、弁護側が弁論を行います。
判決: 裁判所が判決を下します。判決には、無罪、執行猶予付き有罪判決、実刑判決などがあります。

弁護士の重要性

弁護士による弁護活動は、被告人の権利を守るために非常に重要です。弁護士は、被告人の主張を代弁し、公正な裁判が行われるように努めます。また、証拠の不備や手続きの誤りを指摘し、被告人に有利な判決を引き出すために尽力します。弁護士との信頼関係を築き、適切なアドバイスを受けることが重要です。

裁判に備えるための自己チェックリスト

  1. 弁護士との打ち合わせ: 定期的に弁護士と打ち合わせを行い、進展状況を確認する。
  2. 証拠の整理: 自分の無実を証明するための証拠を整理し、弁護士に提出する。
  3. 証人の確保: 自分に有利な証言をしてくれる証人を探し、裁判での証言を依頼する。
  4. 裁判の流れを理解: 裁判の流れを理解し、どの段階で何が行われるかを把握しておく。

判決後の流れ

実刑判決

懲役刑・禁固刑などの実刑判決を受けた場合、被告人は刑務所に収監されますが、その日のうちに刑務所へ移送されるわけではありません。移送先の刑務所が決定するまでの間は、拘留されていた拘置所で「既決囚」として過ごすことになります。いわゆる「アカ落ち」とよばれる状態です。
刑務所と同じように厳格に生活が管理され、未決囚のときには与えられていた自弁購入や手紙の通数などの権利が制限され、毎日のスケジュールが定められています。

執行猶予付き判決

執行猶予付き判決が出た場合はその日に釈放されます。ただし、執行猶予期間中は、法律に違反すればただちに刑務所で服役することになります。執行猶予中の犯罪として意外に見落としがちなのが、交通違反の赤切符です。交通違反の反則金(青切符)と異なり、赤切符は刑事事件の対象なので執行猶予中は注意が必要です。

無罪判決

無罪判決が出た場合、被告人は直ちに釈放されます。無罪判決は、被告人が犯罪を犯していないことが証明されたことを意味しますが、有罪判決率99.9%と言われる日本の刑事裁判において無罪判決は滅多にありません。

服役中の家族の支援

心理的サポート

服役中の家族や知人に対しては、心理的なサポートが重要です。定期的に手紙を書いたり、面会に行ったりすることで、精神的な支えとなります。また、服役者が再び社会に復帰する際の準備を支援することも大切です。

社会復帰のための支援

服役を終えた人が社会に復帰するためには、家族やコミュニティの支援が不可欠です。再犯防止のための教育プログラムや職業訓練を受けることで、再び犯罪に手を染めないようにすることが重要です。地域社会や支援団体と協力し、服役者の再出発を支える体制を整えましょう。

支援団体の利用

支援団体は、服役者やその家族に対して様々な支援を提供しています。以下は、利用できる支援団体の例です:
更生保護施設: 服役を終えた人々が一時的に生活するための施設。
再犯防止プログラム: 再犯防止のためのカウンセリングや職業訓練を提供。
地域サポートグループ: 地域社会での支援ネットワークを構築し、再犯防止を支援。

まとめ

逮捕や拘留、起訴、裁判、服役、そして社会復帰に至るまで、全てのプロセスには法的な手続きと権利が関与しています。これらを理解し、適切に対処することで、不安や混乱を軽減し、冷静に対応することができます。
家族や知人が逮捕された場合、常に冷静でいること、信頼できる弁護士を見つけること、そして必要な情報を事前に収集しておくことが重要です。この記事が、皆様の不安を少しでも和らげ、適切な対応を取るための助けとなれば幸いです。